環科研・公衛研まもれ@大阪

橋下維新の大阪市解体(都構想)は許せない!大阪市立 環境科学研究所(環科研)、大阪府立 公衆衛生研究所(公衛研)の統合 · 独法化、反対。メール dokuhou.hantai@gmail.com ツイッター @dokuhou_hantai

衛生研究所の統合は、まだまだ検討は不十分(2)(HIV検査・研究はどうなる?)

衛生研究所の統合は、まだまだ検討は不十分シリーズ第2回です。

声を大にして言いたいことは、環境科学研究所の統合独法化とは、小さな研究所の話ではなく、自前の研究所を失うことで、「大阪市の行政機能が低下する問題」だということです。都構想住民投票でストップさせたことが再び目の前に来たのです。

明日(3月1日)で、吉村市長は、とにかく可決を迫っています。大阪市の破壊者を止めましょう。何としても!

今日は、大阪市立環境科学研究所と、府立公衆衛生研究所が行っているHIV確認検査や大阪独自の研究について、このまま統合・独立行政法人化したらどうなるか書いてみます。

1.大阪市・大阪府がおこなう無料匿名HIV検査の状況

公衆衛生研究所のメールマガジンでは、大阪における陽性件数が08年まで急増し、高止まりしている現状がわかります。大都市・大阪の大きな問題です。

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大阪府立公衆衛生研究所ホームページ /メールマガジン

HIV感染を減らしていくためには、発症するまで自らの感染に気づかないエイズ患者 、いわゆる「いきなりエイズ」を減らすことが重要とされます。しかし、新規感染者全体に占める割合(いきなりエイズ率) は残念ながらまだ減少しているとは言えません。

感染者自身のためにも社会全体のためにも、HIV感染の早期診断は重要です。

そのため、厚労省は、国庫補助事業として、都道府県、政令市(大阪市や東大阪市など保健所設置市)が行う無料匿名HIV検査を補助し、早期検査の促進を図っています(特定感染症検査等事業実施要綱)。

大阪府、大阪市では、各保健所(保健センター)での無料匿名検査を受け付け、スクリーニング検査での陽性検体について、環境科学研究所と、公衆衛生研究所で確認検査を行っています。また、研究所はその集約されたデータをもとに、大阪における薬剤耐性ウイルス状況、医療機関と連携した疫学調査などにも取り組み、保健所がおこなうHIV対策の政策判断に貢献してきたと言えます。

 

2.統合・独立行政法人化でどうなるのか?

独立行政法人化のもっとも大きな問題は、大阪市・大阪府の行政組織から切断され、別法人とされることです。

上記の、厚労省の無料匿名HIV検査事業は、実施主体は「都道府県・政令市」とされています。研究所ではありません。直営の研究所の時には、大阪市が行う検査事業は、保健所と環境科学研究所で行うのが当然でしたが、法人化されたらそうはなりません。

独法化後、実施主体である大阪市、大阪府が、研究所に引き続き確認検査や研究を行わせることは、実はどこにも規定されていないのです。国庫補助を財源に、研究所に委託契約をして引き続き実施することは「可能」であり、大阪市は議会には「独法化しても引き続き可能」と答弁してきたでしょう。しかし、「可能」と「やる」は違います。

委託契約である以上、一般競争入札が原則とされます。1.でみたとおり、研究所は大阪のHIV対策に大きな貢献をしてきたと言えますが、それを理解しない大阪市長が「委託契約は民間も含めて費用が安い方にすべき」と言えば、研究所への委託はしなくても可能となってしまいます。

大阪市として別の研究所の位置づけを明確にしなければ、研究所への依頼はなくなる可能性があり、そうなれば専門家集団の技術継承は途絶えます。そうしないためには、行政としてHIV対策のために研究所を位置付ける定款の修正、条例等が別途必要になりますが、これまでそんな議論すらありませんし、吉村市長の「修正」にもありません

独立行政法人とは、限られた運営交付金を法人に渡し、自律的、効率的な経営を行わせるための制度とされます。外部資金獲得を促し、行政の財政負担を減らし、運営交付金も減らしていくのが全国で起きていることです。公衆衛生の分野は、外部資金が獲得できない、金儲けにならない分野です。HIV研究などは、コストとして切り捨て、単純検査として民間委託していくことが容易になる体制が独立行政法人です。

そもそも、大阪維新は、それが狙いでした。

自民市議団のみなさまへー井戸市議のリストラ発言を放置して賛成するのですか?統合は機能強化が前提です。 - 環科研・公衛研守れ@大阪

吉村市長は22日の民生保健委員会で「公衆衛生のレベルアップ」のために統合独法化の可決を求めていますが、そうであれば、この独立行政法人化の問題についてしっかり答えるべきです。リストラではない、どんな目的があるのか?それはHIV対策の強化にどうしてなるのか?

このまま独法化すれば、研究所の機能の低下になることは明らかです。HIV検査、研究はその一例にすぎません。現在、研究所で実施している検査、研究のほとんどが、研究所で実施する法的規定は弱く、独法化して引き続き実施させる規定はありません。

(もちろん、HIVも含め、環科研や公衛研の技術がなければできないことも多いのでそんなに簡単ではないですが)

3月1日、吉村市長が提出するとされる「修正」(環境科学研究所は廃止するが、環境部門だけ直営で残す「研究センター」の新設)は、まったく無意味です。行政として、衛生研究所をどう位置付けるかが本来の論点です。

可決をあくまで求めるだけならば、否決が当然です。

「衛生研究所の統合は、まだまだ検討は不十分」シリーズ、まだまだ続けます。

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