環科研・公衛研まもれ@大阪

橋下維新の大阪市解体(都構想)は許せない!大阪市立 環境科学研究所(環科研)、大阪府立 公衆衛生研究所(公衛研)の統合 · 独法化、反対。メール dokuhou.hantai@gmail.com ツイッター @dokuhou_hantai

関空発の麻しん(はしか)感染をどう見るか。いっぽう本日、維新は研究所前で笑顔で記念撮影。

関空で、従業員30人以上も麻しん(はしか)に感染、アウトレットモールなどでさらに広がる可能性、というニュース。
不安が広がっています。
麻しんは治療法もなく、最悪死亡する病気だから当たり前ですね。

いっぽう、そんなニュースの中で、大阪市と大阪府のトップが何も発信していません。
さらに本日9/5、与党の大阪維新は、大阪市と府の議員合同で、市の環科研、府の公衛研をまた視察に行ったそうです(くわしくは後述)。

なにも発信もできないのに、記念写真とって、麻しんの対応に追われている現場の研究所ふり回して、「機能強化の独法化」?

さて、以下、私なりに、今回の関空発の麻しん感染のことを市民がどう見たらいいか、危機管理において何がトップに求められるか、をまとめてみました。
昨日、ざくっと思うことをツイッターで発信したものを追記したものです。
未知の部分もあり、また、誤りもあり得ますので、専門家のかたは、間違っていたらご指摘ください。

 関空発の麻しんの感染をどう見るか。

麻しん(はしか)は、「麻しんウイルス」が感染して起こる、急性の発しん性疾患(しっかん)です。

 
感染すると、脳炎などの重病化につながる場合や、最悪の場合は死亡する場合もあります。免疫を持たない小さな子どもへの感染が心配されます。
特別な治療法はなく、症状を楽にする治療(対症療法)となります。

インフルエンザなどがうつるときは、つばなど、重量のあるものにウイルスがくっついて飛んでいく(飛沫感染)のですが、麻疹のウイルスはもっと広範囲に空気中をただよって感染し(空気感染)、感染力が非常に強いとされています。

また、初期症状は風邪と変わらないため、感染したかどうかの区別がつかず、感染した人の封じ込めも困難です。

しかし、インフルエンザのようにウイルス型がころころ変わるものではないので、ワクチン接種が効果的とされています。

さて、今回、千葉や泉佐野の疫学調査(保健所と衛生研究所がやっています)で、共通の遺伝子型が見つかり、関空が感染源とまでわかってきました。

しかし、これがすぐに大流行になるか、については冷静な情報も必要です。

今回起きていることで、大事なことは、ワクチンをそれなりに接種しているとされる日本社会において、これほど集団的に感染するくらいに、抗体価(免疫)が低い人の割合が多い可能性がある、ということだと思います。
これは専門家の調査で明らかにしてほしいと思います。

冷静な判断が必要、ということでは、
10年前まで麻疹(はしか)は「あたりまえ」の病気でした。
これはこれで、押さえておくべきと思っています。

死に至る可能性のある病気ではあるけど、感染症法での危険度では第5類です。
今回の件でも、完全封じ込めをねらうなら、麻しん患者に接触した人、全員を入院させるべきですが、それは法的にはできない。第5類はそこまでしなくていいとされている。

それでも、昔のように「はしかなんて当たり前」ではありません。
2000年代、以下のように、国をあげて、「麻しん排除」を政策的な目標として、抗体価(免疫)が低い年代へのワクチン接種を進められました。

●1回の接種では免疫が薄れることがわかった
●2006年に0歳と6歳の2回接種(無料)がはじまる。
●2008~2012年に中1から高3の年齢(1回は接種したはず)に2回目追加接種(無料)。
●マニアックなのではしょりますが、保健所と衛生研究所でも徹底的な調査をおこなった。

その結果、公衛研の報告では、2015年度、麻しん患者は46例あって、46例すべてが、その由来は、海外渡航歴のある人が大阪に麻しんウイルスを持ち込んだという結果でした(例えば、フィリピンから5例など)。
46例を調べると、麻しんウイルスの遺伝子型は、B3型、H1型、D8型でした。

この遺伝子型からみて、日本国内の土着株による発生はなかったとされます。

2012~2014年度も、このような「国内土着株がない」状態だったので、2015年3月にWHOは日本を「麻しん排除状態」と認定。
つまり、抗体を持った人の割合が高く、国内流行の危険はなくなったという判断です。

それなのに、今回、そのたった1年後、大阪で30人が一気に感染しました。
実は抗体を持った人の割合は高くないのではないか。
海外からの持ち込みだけでなく、継続的に国内流行になる潜在性があるのではないか。
これが大きな懸念です。

したがって、麻しんの感染をできるだけ抑えるために何が必要か、社会全体の抗体価(免疫)を高めていくために何が必要か、トップの発信が求められています。
行政の本気度が問われています。

さて、国立感染症研究所(公立です!!)
のホームページに、麻しんについて、全国の衛生研究所の調査のまとめのグラフが出ています。( 麻疹抗体保有状況2015 )

これは、麻しんの抗体を各年代がどの程度保有しているか、を示すグラフです。

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グラフの凡例の「抗体価」は、ざっくりいうと、
例えば、赤い線の「1:16」よりも、黄色「1:32」→青「1:64」→黄緑「1:128」のほうが抗体が強いことを意味しています。黄色や青のグラフは、赤のグラフの抗体をもっている割合のなかでも、より強い抗体をもっている人の割合を意味する、「内数」です。

それで、一般的に、麻しんの発症予防には、黄緑の折れ線の「1:128」以上の抗体価が必要だそうです。
黄緑の折れ線を見ると、14歳、19歳、20代後半~30代が、抗体保有率が低く見えます。
その年代のワクチン接種の傾向をいうと、20代後半~30代は1回のみ接種世代、14歳、19歳は、ちょうど2回接種がはじまったばかりの接種対象世代で、接種率が低かったことがあります。
それ以上の年齢の世代も1回のみ接種世代ですが、その世代は接種したうえで、麻しんウイルスに何らか触れる可能性が多かった時代なので抗体価が強まったという説もあります。

もちろん説明できない部分も多々ありますので、専門家の知見を待つべきでしょう。
こうした調査も衛生研究所がしています。

その知見から、行政のトップが感染拡大をふせぐための適切な判断ができるのです。

危機管理は、専門的な知見をふまえて判断するのがトップの役割

松井知事も、吉村市長も、麻疹ウイルスは空気感染するとか、抗体を持っていない人に100%感染するとか、死亡率とか、どの年代に抗体が低いとか知らないでしょ?

逆に、何でも知っている必要はありません。

私も、市民もみんな専門家ではありません。ただ、専門家から学ぶことはできます。

知事、市長は、住民の生命を守り、不安な事態には正確な情報発信をする立場です。そのために、大阪市も大阪府も、感染症の専門家を職員として育てきたのです。専門家がいなければ迅速な広報も、正確な判断もできません。

いま、大阪市と大阪府が進めていることは、大阪市の自前の衛生研究所をなくし、独法化してしまうということです。

「独法化」とは、行政が「自分の直接やる必要ない」と切り離すことです。専門家を失っていいというのです。

それで専門性のない上山信一の「助言」ばかり聞き入れようというのです。

本当にそれでいいんですか?

 

果てには対応に追われる研究所を視察し、笑顔の記念撮影とは何ごとか

議会与党の維新の会議員団は、そんな今日、またしても公衛研と環科研に視察に来ています。
飯田さとし議員がツイッターで報告していますが、
「9月議会に向けて”仕込み”も佳境」と言い、みんなで笑顔で記念撮影しています。
「大阪発の麻しん」には興味はなく、政治的な成果を見せることだけを考えているから、「仕込み」なんて言えるのではないですか。怒りを覚えます。

(写真は飯田議員ツイッターから) やっとる場合か!!!

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こんなときに、政争の道具として「独法化」やってる場合か!?

 そんな時に、行政が育ててきた専門家を、行政から切り離して「自由な研究やってください(金もうけして)」というのが独法化です。最悪や。知識もないのに、どうやって対策を打つの?やる気もないんでしょ?機能強化とかウソつくなって!


目の前の事態に無関心で、専門家から学ぼうともしないならば、その人たちが言う「機能強化のために統合」のウソはもう明らかです。

府民、市民のために、感染症対策の機能強化は大賛成です。

そのために何が必要なのか。

専門家の知見がしっかり生かされる行政組織にするには、独法化でいいのか。

9月議会、組織いじりの議論の前にやるべきことがあります。

いま、大阪市に環科研があり、大阪府に公衛研があり、それぞれ感染の拡大を防ぐ調査、府民市民への情報発信の強化が求められています。

機能強化のためには統合独法化しないと無理だというなら議論に値しますが、、目の前のことをやらない人たちが「100億かけて立派な建物たてることが機能強化だ」と言ってるのは悲劇です。

指をくわえて見ているわけにはいきません。



9月24日のセミナーでも最新の状況を報告したいと思います。
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(事前予約不要ですが、事前予約歓迎。特にキッズスペース使用の場合。)

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