環科研・公衛研まもれ@大阪

橋下維新の大阪市解体(都構想)は許せない!大阪市立 環境科学研究所(環科研)、大阪府立 公衆衛生研究所(公衛研)の統合 · 独法化、反対。メール dokuhou.hantai@gmail.com ツイッター @dokuhou_hantai

都構想で1兆円超の節減効果 あるわけないやろ シリーズその1

6月末に「まとめページ」でブログ再開宣言してましたが、まとまった投稿は久しぶりになります。

出ましたね。

「大阪都構想の効果試算」。

 

大阪市なくしたら、いったい、いくら効果があると思ってるの??

♬♬♬

・・・1 兆

 

www.nikkei.com

 


ないな。

知事の松井氏もなんだか遠慮気味でしたね。まさか、自分で引いちゃってたのかな?

この試算について、いくつかシリーズで批判していきたいと思います。

 

いわくつきの「試算」の業務委託、受注者はやっぱアレだった

そもそも、この「都構想の効果の試算」は、1000万円(府500万、市500万円)かけて、
昨年度(2017(平成29)年度)に委託を実施するはずだったんですよね。

昨年度、府市が募集をかけましたが、誰も手を挙げてくれず、まさかの不成立。

www.sankei.com


こんなに世間に注目されている案件で、手を挙げた業者さんが無しなんて、前代未聞というかとしか言いようがないですよね・・・

担当部署の副首都推進局なんて、エリート視されてる屈強な職員ばかりだろうに、その人らが、業者さんに裏で「参加してよ~」とか必死で働きかけても、誰も手を挙げてくれない、そのくらいリスキーな仕事だったんですよね。

では、これを受けに行く業者となると、よほど恥知らずか、御用か、どっちかですね。
(恥を知ってる御用、って見たことないけど。笑)


それで、再度、募集して、受注したのが、えーっと

嘉悦大学・・・
はて・・・

あっ 大阪市特別顧問でおいしい思いしてる高橋洋一氏が教授をやってる大学じゃないですか!
しかも竹中平蔵も経営の役職してる大学やん。
もう完全に安倍=維新とグルの一味じゃないですかー。
恥知らずで、かつ、御用中の御用じゃないですかあ。そら手挙げるわな。

 

府民と市民の血税1000万円をムダにして、住民を裏切るようなことはよもやないよね?
ということで、チェックするため、当会で、試算の結果報告書(108ページ)(以下「報告書」という)読みました。

なお、報告書は、以下の市のホームページからダウンロードできます。

www.city.osaka.lg.jp


読んだけど。
いやー、やっぱ裏切られたな住民。税金返せこんなもん。

 

論点

当会としては、もう少しじっくり調べながら、報告書を、主に以下の論点でシリーズで批判していきたいところです。

●試算「モデル」の世界観への批判
(「住民への歳出を抑えた額で、経済活動への投資を行う」「意思決定関与者が少ない」を善とする世界観ほか)

●前回の都構想の効果額試算方法との共通点と、不整合の点

●仮説の根拠がわからず、検証もない上にデマ(=モデルとして終わっている)な点

●他、いろんなずさんなところ


今回、第一回は、手早く作れるという理由も大きいのですが、
維新市政・府政が、意図的なデマで都構想を進めようとしていることがわかるため、
3点目の「仮説の根拠がわからず、検証もない上にデマ」の一例をとりあげます。

なお、これはデマの重要な代表例ではありますが、一例に過ぎないです。他にもいっぱいありますので、1つ1つとりあげます。

 

そのU字仮説、ほんまでっか?(デマでしょ)

 

 

まず、これは報告書に貫かれている仮説の、簡単なイメージ図です(当会作成)。

f:id:dokuhouhantai:20180713015350p:plain

簡単には、
曲線がU字になってて、人口が大きすぎても小さすぎてもアカンのよ、だから特別区に市を分割したいのよ~。
という意味です。(総合区案も同じように、最適解の合区をしたいのよ~、の理屈になっています。)

U字でないと、単に右肩下がりとかだと「大きな大阪市のままで分割せんのが、一番効率ええがな」ってなるもんね。

だからU字仮説は絶対、特別区案の外せない理屈なのです。



なぜU字になるのかについて、報告書で言ってることは以下。

==(報告書引用)==

 人口と歳出の関係を図に表すとU字の関係となることが知られている。すなわち、地方自治体の財政構造は人口が増加すると、規模の経済性が働き、住民1人当たりの歳出が抑えられる。一方、人口規模の拡大は、きめ細やかな行政サービスを困難にさせる。補完性の原理の恩恵を失わせてしまうため、過度に人口規模が大きくなると住民一人当たりの歳出は拡大してしまう。
(中略)言い換えれば、最も効率的に財政運営を行える人口規模が存在すると考えられる。

 ==(報告書引用おわり)==

 

それで、いや、「知られてる」って言われても・・・知らんよ・・・

一般論として、規模の経済(スケールメリット)で右肩に下がるくらいはわかるとしても。

 補完性の原理(基礎自治体で出来ることはやる、やれないことを都道府県や政府が補完するという行政上の役割分担の原則論のことですよね)の「恩恵」を「失わせてしまう」ってなに?全然ぴんと来へん。
一般に、距離が遠くなると移動のコストがかかるのはわかるけど、それってむしろ都市部ではないし、人口と直接関係ないし。なんのことですかね?


ああけど、報告書に、実際の自治体のデータでの分布図があるじゃないか。
その実際の図がU字になってれば、まあ、そうなんじゃね?

というわけで、以下、報告書の分布図。
(デマをあばく都合上、プロットされてる自治体名が明記されている総合区試算用の分布図を採用した。)

f:id:dokuhouhantai:20180713022530p:plain

 

疑問1)・・・これ、ほんとにUですか??

Uかなぁぁぁ?って、もっとツッコミたいんですけどね、いったん置いといて。
さらにおかしなことが。

上図は、赤い三角が大阪市の24区、緑の丸が浜松市の7区なのですが、この2自治体だけは「予算書の入手の都合上、人件費も足し合わせた額になってる」って言うんですよ。

いや、
疑問2)人件費の割合って高いよね?そこ統一せんままでU字曲線求めるとか、言う?


ってことで、あやしいな、と思って、大阪市のホームページで各区の予算書見に行ったら、この分布図の額と概ね一致する、人件費を足し合わせた額はあったんですが、人件費を足し合わせない額もあったんですよ。15分もあれば、人件費除いた数字出せましたよ。

大阪市:平成30年度予算編成過程 (…>予算・予算編成過程>平成30年度予算)


疑問3)え?なんで大阪市の人件費をすぐ除けたのに、除かなかったん???

疑問4)ていうか、ネット検索が下手だったとしても、発注者の大阪市本人に、当然データもらいなよ?


どんな仕事してんねん、あやしすぎる・・・ってことで、当会が、人権費を除いた大阪市24区のデータで、赤い丸で、報告書の図の上にプロットしたのが以下。

f:id:dokuhouhantai:20180713024502p:plain

 

疑問5)全然かたち変わってしもてるやん。しかもやっぱ、Uちゃうやん!

 

浜松市の緑の丸も、絶対同じことになりますよね。そしたらせいぜい、「かなりゆるい右肩下がり」やん・・・

 

こんな状態で、報告書は進み、U字の近似曲線、作っちゃってましたよー。
(近似曲線の当てはまりの良さを示すAdjR2が0.9程度と、現状の分布には当てはまりが良い、という曲線になっている。)

そして、そのUの一番下(くぼみ)のところに合区した総合区がうまいことはまって「総合区は、今の24区より効率がいい」と結論づけました。
それがこれです。

f:id:dokuhouhantai:20180713025710p:plain

 

疑問6)当会のプロットで曲線つくったら、全然ちゃう結果なってるよね?

「-」にきわめて近い「U」になって全く歳出削減効果がない結果とか、
U字の近似式の当てはまりが悪いものになるとか、
最適解の人口(Uのくぼみ部分)が35万程度にはならないとか、

になってるんちゃいます?

他市のは「定数項ダミーで補正してる」と言いたいのでしょうか?
15分でできる大阪市の人件費を取り除く処理のが絶対先でしょ。人件費も加味して効果評価したかったのなら、他市のも足し合わせてから評価しないと推計の意味ない。なぜ仮定に仮定を重ねた推計をする?

ちょっと時間かけて正しい近似式の計算やってみよか?(誰かやってほしい・・・)

いや、わからないですけどね。
単に報告書がブラックボックスなだけなので、当会の指摘もあたらない部分があるのかもしれないので、なんらか、真相を明らかにしていきたいですね。
(ブログの引用はもちろん自由で、歓迎です。)

 

ちなみに、上記までの内容は「U字仮説のデマ」をあばく、という目的だけで、データの出典がある程度つかめる総合区の試算を例にしました。

本丸である特別区の試算ではどうなのか?

特別区の試算も同じU字仮説で、特別区の試算では、以下の全国の全市町村(約1700)の分布図(住民1人当歳出と人口)が掲載されてます。

f:id:dokuhouhantai:20180713094335p:plain

 

疑問7)U字かなぁぁ???このグラフだけを根拠にモデル作って、50万人規模(≒特別区)が最適解で、歳出削減効果1兆円とか、言える?

 

彼らの出してきた数字は「デマ」としか言いようがないです。
けど、当会も、定性的には(説明の世界では)、U字にはなり得る、とは考えているんですよ。

ただし、彼らとは逆の理由で。

というのは、
もし、人口規模のでかい市がやや歳出増だとしたら、それは政令指定市なんですよね。(上のグラフもそう見えますね)

政令指定市はかなりの権限を持って地方自治をやるんで、中核市や一般市とは一律で比較できない権限や責任を持つんですよね。

そこは歳出は「増」にはたらくとは思います。

有機的に発展する都市と住民の幸せを支えるため、むしろ「補完性の原理(ニアイズベター)」という行政ポリシーを貫いた結果としての、歳出増だと思います。

この報告書では、「補完性の原理」の「効果が失われて歳出増」って説明してるんですけど、逆だと思うんですよね。
「補完性の原理」の「効果によって」歳出増、なんじゃないの?

まあ、これは当会の仮説であり世界観であって、数字で検証してません。


「補完性の原理」(ニアイズベター)という行政ポリシーが、若干の歳出増程度で、達成できるのが、政令指定市の良さなんじゃないですか???

それを、デマまで使って、Lに近いUの、些細な歳出額を、大都市自治体の誇りと責任と一緒に、切り落とそうというのが都構想の本質じゃないですか?


ここは、またシリーズ何回目かで、本質論として、展開したいと思います。


他にも、そもそも、区の予算ってまちづくり事業費とか、限られた予算だけなので、この数字で試算するってこと自体が何か意味があるの?という疑問もあるし、
まだまだ、試算額の結果とかも、ツッコミたいところはあるのですが・・・。

今回は、数字を用いた デマをテーマにお送りしました。