環科研・公衛研まもれ@大阪

橋下維新の大阪市解体(都構想)は許せない!大阪市立 環境科学研究所(環科研)、大阪府立 公衆衛生研究所(公衛研)の統合 · 独法化、反対。メール dokuhou.hantai@gmail.com ツイッター @dokuhou_hantai

3月10日委員会。大阪維新・飯田市議の質疑の問題解説。

2016年3月10日13時からの大阪市議会(民生保健委・予算審議)での、大阪維新・飯田さとし市議と大阪市理事者による質疑は、議事録をアップしたところです。

本日(3月10日)、大阪市 委員会。大阪維新・飯田市議の茶番質疑の議事録。 - 環科研・公衛研守れ@大阪


「ブログ、ツイッターでもご意見いただく」と飯田市議が、このブログのことに言及し、ブログの批判内容をそのまま引用し、「1問1答」方式で、「環科研、公衛研の統合独法化は問題無い」というベタな茶番質疑をしていました。

最後、「きちっと1つ1つ答えを返せば納得いただけるかなと」と締めくくっていましたが・・・


なーに言ってんだ! いっこも ”きちっと返して”ないだろーが!

1つでも"きちっと"返してから、言え!

 

質疑は突っ込みどころはいっぱいありますが、取り急ぎ、問題点を解説します。

ちなみに今後の質問の割り当て日は、明日3月11日が自民、14日が公明、共産、15日が共産、大阪維新。
心ある議員のみなさん、大阪維新と大阪市のデタラメを許さず、徹底追及をお願いします。

 

(問題点1)大阪市は今日も、2月22日の自民の委員会質問に誠実に答えなかった。かつ、22日の答弁もウソだったことを自己暴露。

 

2月22日の民生保健委員会で、自民・西川ひろじ市議は、大阪市理事者に対して、以下のように言いました。

「この問題については実に都合のいい理屈をいつも並べてくれるなと。マイナス点もしっかり考えて。命と健康のこと。もっと真剣に答えてほしいなと思う。」
「(国の感染研は、)"国の重大な危機管理に直結する業務を行っているため独立行政法人化しない"となっているんですよ。」「全国でもすべて直営。国も含めて大事な組織だから直営。大阪だけ何を考えているのかな。」

「(感染症法改正で市長の責務が明記されたことに触れて、)市民に近い大阪市長に対処する義務があるのは当然。環科研独法化は、運営面で効率化を高め、コスト縮減が求められる。」「現行体制が守れるのか。」「そもそも、”二重行政”が、スタートじゃないんですか?その辺考えてほしい。」

(質疑全体は、こちらで読めます。)

本日(2月22日)、大阪市 議会 委員会。採決保留。自民・西川市議の反対討論 支持します! - 環科研・公衛研守れ@大阪

 

しかし、今日も、大阪市理事者は、その質問に応える努力を一切おこないませんでした。

大阪市は、「市長の責任が果たせないことはないとしか言えず、しっかりと財源を確保して、地独法に依頼する担保としたい」と全く根拠のない、意味も不明な答弁をしました。前回委員会から2週間以上もたつというのに、またしても、デメリットをまともに検討もしなかったんですね。
ただでさえ、委員会の限られた時間の場で、もう3回も同じ質疑をさせ、3回も否決されているのに、これは非常に不誠実な姿勢です。


かつ、2月22日の委員会で大阪市は、「府域では統合により倍増する職員を集中的に投入する」と言っていましたが、「倍増はしないのでは」と見解を問われると、本日の委員会では大阪市は、「統合することでトータルが増えるわけではないが、単独とくらべ人員を効果的に割り振れる。重点的にわりふれる。」と答弁しました。

は?

「トータルは増えないが」って、じゃあ、「倍増」って何が2倍に増える意味だったの?
この答弁は、「倍増」の答弁がウソついてました、と認めたのと同じです。

そんなウソ・印象操作は、自民の市議ははなから信じてはいないでしょうけども。

市民をだます意図をもった不誠実な答弁だったんじゃないんですか?

大阪市は、再三にわたる委員会での指摘に応えることもせず、印象操作を大阪維新と一緒になってやっていたことが、今回の答弁で明らかになりました。

 

 次に、上記の自民の西川市議の質問にもある「感染症法改正でいう市長の責任」をめぐって、今日の質疑の問題を掘り下げて解説します。 

 

(問題点2)大阪維新は、「市長の責務」の本質も、衛生研究所の核となる業務(健康危機対応)も、みすえられていない。

まず、結論をポイントとして最初に挙げます。

■ポイント1
大阪維新は、「市長の責務」の感染症検査は、国庫補助事業という自治体の関与性の極めて高い事業であるのに、それを知らずに独法組織の裁量でおこなう(運営交付金でおこなう)事業と認識して、「市長の責務」の性質を見誤っている。


■ポイント2
「市長の責務」の検査が、市の「外部委託」(人に頼んでやってもらうこと)の形態をとること自体、命に関わる問題への無責任な対応。

 

■ポイント3
感染症検査では、衛生研究所が検査方法を開発しながら標準化する(検査標準作業書)。「外部委託」となったら、委託仕様書にあたる「検査標準作業書」を外部委託先の研究員に書かせることになる。それは脱法行為!

 

以下、長々と展開します。

感染症法改正にともなう「市長の責務」に関する飯田市議の質疑から。

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 大阪維新・飯田さとし市議:
平成28(2016)年4月1日に感染症法改正、規定が整備され、感染症検査が市長の責務とされた。そこで、「市長の責務ができたから、地方衛生研究所は直営であるべきとの指摘が出てきている」ときいている。
独法組織にすることで市長の責務は果たせなくなるのか伺いたい。

市(福田課長):
感染症法改正に従うと、業務管理要領に基づいた病原体等検査の実施であれば差し支えなく市長の責任が果たせないことはないと考える。

大阪維新・飯田さとし市議:
ありがとうございます。要は経営形態ではなく精度管理が課題と思う。きちっと業務管理要領にもとづき検査が実施される、ルールに基づきおこなわれる検査であれば、直営か独法かは問わないというのが自明の理かなと思っている。
独法組織でも、市長の責任は果たせないというものではなく、きちっと果たせるとの答弁と思っている。

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それにしても、市の答弁「市長の責任が果たせないことはない」とは、なんと弱々しいものでしょうか。「果たせます」と言えない。
大阪維新の飯田議員、勝手に「きちっと果たせるとの答弁と思っている」と答弁をねじまげたらいけませんね。それはあなたの願望です。

市の答弁は、正直です。「果たせます」なんて言えないのです。

それには理由があるのです。

 

まず、感染症法改正の本質の話ですが、「市長の感染症検査と報告の責務」がなぜ明記されたのか?
それは、新興感染症などの感染拡大を本気で防止していかなければ、社会が破壊的な危機にいたるという、そういう危機感からです。

そのくらい差し迫った問題として、国際的にも認識され、日本においても認識されたということです。

法改正の本質は、自治体に責任をもって検査と報告をやらせること、その際、衛生研究所が、実態として健康危機管理の核をにぎっているので、そこの機能を最大限に引き出していこうということです。

「ルールに基づきおこなわれる検査であれば直営か独法化は問わない」という認識は、あまりに軽薄、命に対して無責任な姿勢です。大阪は、デメリットが明らかで、担保のないまま突き進むのでしょうか。これを認めるのかどうか、市議会議員の判断は大きな責任が問われることになります。

独法化は法改正と逆行しています。大阪維新は、ここが全く見据えられないのです。もっと具体的に説明して、見据えてもらいましょう。(まあ目をそらすのでしょうけども。)

 

独法化すると、感染症検査の業務形態がどうなるか、掘り下げます。 

お金の流れから説明します。

独法組織に入ってきうる”お金の流れ”は簡単には以下の2パターンとなります。

①府・市→(運営交付金)→独法組織へ

②国→(国庫補助金)→府・市→(委託料)→独法組織へ


感染症法で「市長の責務」とされた検査は、国庫補助金で行う事業(国庫補助事業)となっています。したがって、お金の流れは上のパターンの②のほうになります。

なぜ「国庫補助金」が府・市を経由して「委託料」に変わっているかというと、国庫補助金は自治体に渡すものなので、独法には直接行きません。
国庫補助は使用目的(使途)を特定した補助金であるため、独法化した場合、独法組織が裁量で使用できる運営交付金に当てることはできず、独法組織で、国庫補助を使うためには、「運営交付金」とは別枠の「委託料」にする必要があります

飯田市議は、この後の質疑で、”独法であれば運営交付金”と言っていますが、それは間違いです。(事前に私に聞いてくれてもよかったのに。)

えらい細かいマニアックな指摘をしなさるな・・・と思われるかもしれませんが、このこと1つ取っても、実は本質的な飯田市議の問題の表れといえるんですよね。

すなわち、感染症法の検査が、「国庫補助事業」という自治体の責務・関与が色濃く問われる業務であるのに、それを独法組織の裁量で行う事業(運営交付金で行う事業)と認識している時点で、感染症法の検査の位置づけを見誤っている証左なんです。


(検査の国庫補助の詳しくは、国庫補助要綱参照。熊本県のHPにのってました。

https://www.pref.kumamoto.jp/common/UploadFileOutput.ashx?c_id=3&id=5988&sub_id=1&flid=2&dan_id=1

 )

 

この時点で、もう飯田市議は「否決」に回ったらどうや?とは思いますが、もうちょっと、飯田市議の質疑にそって、「委託契約」の「精度管理上の問題」も掘り下げていきたいと思います。

 

飯田議員は、「要は経営形態ではなく精度管理が課題」としました。

法律上、独法への委託がダメとは書かれていません。

では、衛生研究所を独法化した場合の、感染症検査業務の精度管理がどうなるか。

 

前述どおり、お金の流れから規定される形で、「市長の責務」である感染症検査は、必然的に、市との「委託契約」の業務形態をとることになります。

市は「外部委託」する、というわけです。

この「委託契約」が精度管理においても、「市長の責任が果たせる」と言えるのかどうか。

「外部委託」は、国語辞典でなんて書いてあるでしょうか?
「ゆだね任せること。人に頼んで代わりにやってもらうこと」と書いてあります。
「ゆだね任せること」は、ふつう、「責任を果たす」とは言いません。

命にかかわる問題は、委託して終わりになりません。そのチェック体制がないと責任を果たすとは言えません。

だからこそ国も、どの自治体も、「重大な危機管理に直結するため」直営で衛生研究所を運営しているんです。

 

それでも、大阪維新は、「経営形態の問題ではない。委託でも、大阪市としてのチェック体制、責任体制、精度管理は可能」とまだ強弁しそうですね。

百歩ゆずって、法人(独法組織)に外部委託した場合の、「発注者」として大阪市がやらなければいけない中身について、見ていきます。

 

「精度管理」についての国の規定をご確認ください。
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(参考)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則の改正施行通知(平成27年9月28日)より

第二(1)検査の実施について
ア法第15 条第4項の規定により一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症又は新感染症に係る検査を実施する場合、試薬等管理標準作業書、機械器具保守管理標準作業書、培養細胞管理標準作業書、検体取扱標準作業書、検査標準作業書、検査の信頼性確保試験標準作業書を作成し、これに基づき検査を実施すること。(省令第8条第5項第2号関係)
イ法第15 条第4項の規定により三類感染症、四類感染症、五類感染症に係る検査を実施する場合、検査標準作業書、検査の信頼性確保試験標準作業書を作成し、これに基づき検査を実施すること。(省令第8条第5項第3号関係)
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このように、法の施行規則において、精度管理のための各種の標準作業書の作成が定められています。作成する義務が課せられているのは、大阪市であり、独法化された法人ではありません。
これは大事な点です。

感染症の検査は、法人(独法組織)への委託によって行われます。
委託というのは、大阪市側が仕様書を定め、この通り検査をしてくださいと委託し、結果を検査する仕組みです。
検査の仕様は、この施行規則で定められる標準作業書を満たすことが必要ですが、大阪市側に、このような専門的な標準作業書を作成できる知識をもった職員がいるでしょうか?
まさか、委託先の研究所職員に標準作業書を作成させるのではないですよね?それは、「丸投げ」と言われる脱法行為です。

また、感染症検査の結果について、大阪市側に、標準作業書のとおり実施されたか検査できる職員がいるでしょうか?まさか、実績検査なしで委託料を丸投げで支払うつもりではないですよね?

国への報告は誰がするんですか?「病原体等検査の実施であれば差し支えない」と言ってますが、報告は市長の責務です。委託契約に報告事務も入れるんですか。委託先が検査した内容について、責任もって国に報告できるんでしょうか。


実態から言えば、丸投げ以外にはありえません。

衛生研究所の業務の核は、ルーチンではない健康危機事象に高い専門性をもって当たり、感染拡大を防止することにあるからです。

感染症検査の精度管理には、その特殊性を理解した上で行う必要があります。感染症の検査は、検査方法が確立されたものは少数です。また、標準作業書も、定期的に国立感染症研究所の「ひな形」もバージョンアップされていきます。1つの病原体の検査についても、複数の方法が存在する場合が多く、検体の種類、検査の頻度、目的等に応じて使い分けられているものです。また、新興感染症の場合は標準的な検査方法が確立されていません。原因究明を目的とする検査では確立された道筋がなく、臨床診断から検索すべき病原体を推測して検査を行い、正解にたどり着くものでしょう。


したがって、感染症法改正に基づき、大阪市長が責任を果たす委託契約は無理があるのです。ルーチン化され規格化されたものしか委託は成立しません。

「精度管理」の課題を見てきましたが、標準作業書の作成の問題だけではなく、高度な技術や知見を持つ人材育成も、「市長の責任を果たす」ために欠かせません。 

 

(参考)下記リンクの「参考資料1 感染症発生動向調査事業における病原体検査に関する提言(PDF:588KB)」に、法改正時の「精度管理」の課題が記載されてます。

感染症部会審議会資料 |厚生労働省

 

以上の問題点は、独立行政法人化という経営形態でなければ生じません。このようなデメリットが、この段階ではじめて審議されていること自体が論外です。

その他の飯田議員の一問一答についても、別に記事にしますが、ちゃんと大阪市が大阪市として責任もって自ら実施(直営)するしかないんです。 

 

大阪維新は、それが見据えられないことは、同日のごみ収集事業の質疑からも垣間見えます。
なんにしても、とにかくさくっと、外部化・民営化して、非正規雇用に置き換えて、事業は選択と集中でリストラすればいい。どの議事録をとってみても、彼らはこの議論しかしたことはないんですよね。
えっらい簡単な仕事やってますよね。(絶対やりたくない仕事ですが。)

こんなの議会の議論ともいえないです。結局は、大阪市廃止と、住民の公的財産・生活インフラを金儲けに変えて、投機家のお仲間で山分けをやりたいだけですから。

全ては、そういう為政者と、そういう為政者から人々を守りたい人との、闘いです。

 

心ある市民のみなさん、議員のみなさん、こんな政治を終わらせましょう。