松井・大阪府知事が言い出した「統合・独法化で疫学調査の機能強化」はとんでもないデマ
昨日のブログでは、公衛研・環科研の統合・独法化について、
松井・大阪府知事と吉村・大阪市長が、
「新施設一元化で100億円」
「情報管理部門や疫学調査チームを新設し、統合による機能強化を打ち出す」
と言い出したニュースのことを書きました。
(8月22日ますます見逃せない。「研究所一元化に100億円」をどう見るか。 - 環科研・公衛研まもれ@大阪)
今回は、この松井知事らのいう、「統合・独法化で、疫学調査チームによる機能強化」はふざけるな!と言いたい記事です。
統合・独法化で疫学調査チームができるだと?
なにがなんでも『統合したら機能強化できるならええやん』という印象をつくりたいようです。みんなだまされないで!
独法化したら、「疫学調査」は、逆に機能しなくなります。
これ大事なポイントです。
この9月の大阪市・府議会に提出予定の「中期目標」案(※)でも、「疫学調査」が拡充すべき機能として記載されています。
特に拡充すべき機能と新たな事業展開
府市研究所の統合を契機とし、
ここで「疫学調査」ってなに?(マニアック注意)
O-157など腸管出血性大腸菌は、感染症法により、診断した医師は保健所に届け出る義務があります。診断した日に〇印をつけています。(追記:黄色の着色は下痢などの症状が出ている日)
(事例1)
Aさん~Fさんまでの発生情報を受けた保健所は、「これは集団発生ではないか?」と疑うことになります。
保健所は、Aさん~Fさんが同じ会社であることから、他の従業員も調べたところ、病院に行っていないGさん~Jさんも下痢症状などO-157の症状があることが分かりました。
O-157の潜伏期間は平均5日なので、このように一斉に患者が出ている場合は、同一の日に原因があったのではないか?と推測します。
そこで、保健所は全員から、過去1週間くらいの喫食調査(いつ、どこで、だれと、何を食べたかの調査)をします。
その結果、1日(★印)に、Aさん~Iさんは、同じ店で同じ定食を食べたことがわかると、その定食による「食中毒」が原因だと推定することができます。
衛生研究所の検査により、例えば、定食の牛肉から菌が検出されれば、その牛肉が原因と推定されるので、その流通を止めていくという対策が必要になります。
また、そのお店のコックさんがO-157だったことが原因かもしれません。
そうであれば、そのコックさんには治るまで休んでもらう必要がありますし、汚染された器具を消毒する必要があります。
衛生研究所が遺伝子レベルまで調べることで、さらに科学的に感染源を特定することができ、お店の営業停止など「公権力の行使」によって、感染拡大をとめます。
(事例2)
患者の発生は一斉ではないパターン。
12日に、多数の患者の届け出を受けて、調べたところ、実は5日からAさんが発症していたことが分かりました。
全員の喫食調査をすると、4日に同じお店で同じ定食を食べていたことが分かりましたが、この経過では、そのお店が原因の「食中毒」ではなく、Aさんが感染源となって(トイレなどを介して)感染が広がった事例と推定できます。
Aさんが感染源であれば、Aさんには自宅待機してもらうとか、下痢などで汚染されたトイレの消毒をする必要が出ます。さらには、Aさんはどこで感染したのかを調べると、一緒に食事などはしていないJさんと同じ遺伝子型別の菌が原因だったりします。
そうすると、Aさん、Jさんが共通する知人などに隠れた集団発生があるかもしれません。
このように、「疫学調査」を、検査データという科学的裏付けをあわせて行うことで、必要な対策がまったく変わってきます。
このようにある種、探偵のような調査によって、市民生活の安心をつくっているのが、保健所と衛生研究所です。
疫学調査の強化は、現場が求めていたのに、松井知事と上山信一特別顧問が否定した
事例であげたように、「疫学調査」とは、個人の行動を調べる「実地疫学」と「検査結果の解釈」の組み合わせであり、この2つは有機的につながっています。
この2つを有機的にうまく連携させていくことこそが効果的であり、機能強化ですね。
現在、保健所の医師、保健師は「実地疫学」の経験は積んでいますが、検査結果の解釈やウイルス等の特性を調査しているのは研究所の研究員です。
だから、研究所も、検査だけをするのではなく、保健所の「実地疫学」と一体で疫学調査を担ったほうがいいのです。
言われている「疫学調査チームの設置」が、そういうことを目指すのであれば、ぜひやっていただきたい。
ただ、それは松井知事が新しく考えたことではなく、2006(平成18)年度の「健康危機管理のための地方衛生研究所のあり方(提言)」にも書かれています。この提言をまとめたのは、当時の大阪府立公衆衛生研究所の所長です。
この2006年の提言の中で、「疫学調査」の強化については、以下のように書かれています。
上山信一・特別顧問は、現場は既得権に過ぎない、とばっさり切り捨てました。
今すぐやれる「機能強化」なんだから、「統合」とか関係なく、今すぐやれ
独法化したら、「疫学調査」の機能は破壊される。
都道府県知事は、感染症の発生を予防し、又は感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするため必要があると認めるときは、当該職員に一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者、新感染症の所見がある者又は感染症を人に感染させるおそれがある動物若しくはその死体の所有者若しくは管理者その他の関係者に質問させ、又は必要な調査をさせることができる。
4 都道府県知事は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定により提出を受けた検体若しくは感染症の病原体又は当該職員が採取した検体について検査を実施しなければならない。
これは、「疫学調査」で個人情報を調べ上げるという、公権力行使の度合いが高い行為については、都道府県(および政令市)の「職員」にさせなければいけない、ということです。
多くの法律の条文には、「都道府県知事は・・・を行う」といった文言がかかれており、これは、委託によって外部団体が実施しても、知事が行ったことにして良いと、解釈されています。
これとちがって、わざわざ、「都道府県知事は・・・当該職員に、・・・させることができる」との文言にしたのは、「外部団体に委託はできない」という法律の強い意思表示です。
公権力行使は、公務員が行わないといけないのです。
こんなデマで進めようとしている研究所や都構想のこと、一緒に考えませんか?8月27日は集会へGOです ↓ ↓www.youtube.com(追記8/19)「東京都と匹敵する西日本の拠点となる研究所にする」(松井知事)と言いますが、ならば独法化してはいけません。東京都健康安全センター(http://www.tokyo-eiken.go.jp/k_epid/ )は、実地疫学調査を行うチームを持っています。「東京都に並ぶ」と松井知事は機能強化をアピールしてますが、独法化したらできません。残念ながら。違法なんで。
HPから引用「感染症発生時に保健所等が行う積極的疫学調査に関して、実地疫学調査チーム(TEIT:Tokyo Epidemic Investigation Team)を派遣するなどの技術支援を行っています。」
松井知事は「東京都に匹敵する西日本の拠点」とか豪語してますが、デマです。実地疫学調査はできないし、他府県の応援にも行けません。これも感染症法第15条から明らかです。
感染症法第15条10項
都道府県知事は、第一項の規定による質問又は必要な調査を実施するため特に必要があると認めるときは、他の都道府県知事又は厚生労働大臣に対し、感染症の治療の方法の研究、病原体等の検査その他の感染症に関する試験研究又は検査を行う機関(以下「感染症試験研究等機関」という。)の職員の派遣その他の必要な協力を求めることができる。
これも、都道府県(および政令市)の職員であることが条件です。
独法化して、行政から切り離してしまえば、東京都と匹敵することは不可能。。
何をもって「西日本の拠点」?デマで議会をだますのは許せません!