環科研・公衛研まもれ@大阪

橋下維新の大阪市解体(都構想)は許せない!大阪市立 環境科学研究所(環科研)、大阪府立 公衆衛生研究所(公衛研)の統合 · 独法化、反対。メール dokuhou.hantai@gmail.com ツイッター @dokuhou_hantai

大阪府の研究所を独法化したら、シックハウス症候群の調査研究も危機に

議会で取り上げられたわけじゃないですけど、
衛生研究所が予算がないなか、研究員が工面・工夫して取り組んでいる調査研究は、たくさんあります。
独法化したらまっさきになくなりそうなのは、そういう分野です。

今回は、その中で、「シックハウス症候群」について考えてみます。

シックハウス(室内空気汚染)、って知ってますか?
新しいおうちの壁紙や建材。新しい家具。
ステキですが、いっぽうで、まだ乾ききっていない、接着剤や塗料の成分(ホルムアルデヒドなどの有機溶剤)が室内にただよっています。

 それらの成分は汚染物質なので、誰にでも健康にはよくないですが、特に、そういった成分に弱い人や赤ちゃんなどには、めまいや、のどの痛み、呼吸器系疾患の原因になってしまいます。そういう症状をシックハウス症候群、といいます。

めったにないこと、ではなく、よくあることです。
(私もシックハウス症状が出ますので、新居に移る前には、2週間くらい喚起などの対策をします。)

それで、シックハウス症候群への国の対応として、ホルムアルデヒドなどは規制されても、現代社会では、次々と新しい、安価で規制のない物質が開発され、それにより新たにシックハウス症候群が出ているとか。

まあ、悪く言えば、脱法ハーブみたいなものですね。

 

さてさて。
府立公衆衛生研究所の定期発行のメールマガジンでは、研究所の取り組みについて情報発信されています。

2016年9月30日の157号では、「化学物質による住宅等室内空気汚染の現状と対策」(生活環境課)の取り組み。

大阪府立公衆衛生研究所ホームページ /メールマガジン

少し引用します。

↓引用ここから(赤字はこちらで着色)↓

最近は、規制化学物質の代替となる化学物質が建材等に使用され、それが原因と推定されるシックハウス症候群の発症事例が各地で報告されています。
また、家具や日用雑貨などの家庭用品の購入・使用によりシックハウス様症状を発症したとの相談が当所にも多くあり、居住者が室内に持ち込んだこれらの物品から発生する化学物質による健康被害は全国的にも多発しています。
 このような現状とともに、上記の化学物質室内濃度指針値の策定後10年以上経過していることなどの理由から、厚生労働省では、2012年より、2004年以降途絶えていた「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」を再開しました。
検討会では、諸外国における空気中化学物質の規制に関する情報収集を進めるとともに、国立医薬品食品衛生研究所 (国立衛研) と連携して住宅室内空気の汚染調査などを実施しています。
当所も国立衛研からの依頼を受け、同調査に協力しています
今後、これらの調査結果を参考にして、生活衛生上居住者に影響を及ぼす可能性の高い化学物質について、新たに濃度指針値が順次策定されていくものと考えられます。

↑引用ここまで↑


ちなみに「国立衛研」も、当然に直営です(国の公衆衛生は国の責任ですから)。


この調査については、以下のページで報告されています。

シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会審議会資料 |厚生労働省

それによると、計100件の住居・マンションについて、地方衛生研究所の協力を得て、指針値が設定されていない化学物質について、詳細な暴露濃度データを収集しています。

新たな指針作りは、国が単独でできるものではなく、地衛研の協力なしにはできないのです。

協力した地方衛生研究所は以下の22研究所です。

1. 北海道⽴衛⽣研究所(5) 2. 宮城県保健環境センター(2) 3. 埼⽟県衛⽣研究所(5)
4. 千葉県衛⽣研究所(4) 5. 千葉市環境保健研究所(5) 6. 東京都健康安全研究センター(3)
7. 神奈川県衛⽣研究所(3) 8. 横浜市衛⽣研究所(5) 9. 新潟県保健環境科学研究所(5)
10. 富⼭県衛⽣研究所(5) 11. ⼭梨県衛⽣環境研究所(5) 12. 静岡県環境衛⽣科学研究所(4)
13. 愛知県衛⽣研究所(5) 14. 滋賀県衛⽣科学センター(2) 15. 京都府保健環境研究所(5)
16. ⼤阪府公衆衛⽣研究所(6) 17. 神⼾市環境保健研究所(4) 18. 広島県⽴総合技術研究所保健環境センター(5)
19. ⾼知県衛⽣研究所(5) 20. 福岡市保健環境研究所(2) 21. 熊本市環境総合センター(4)
22. 沖縄県衛⽣環境研究所(5)


公衛研は16番目に載っていましたね~。

それにしても、全国の半分以下の都道府県しか協力していません。
どの地方衛生研究所も、予算が少なく、人員も減らされ、このようなマイナー分野(しかし住民の健康には身近で大きな問題)は手を付けられないのでしょうね。

大阪府においても、公衛研のこの取り組みについて、予算措置はされていません

研究所の独自の取り組みとして継続され、ノウハウも蓄積されています。

以前に、放射能のモニタリングポストの維持に、研究員の執念が欠かせない、という記事を書きましたが、それも同じようなことです。
(その記事: 大阪府の研究所を独法化したら、50年間測定している放射能のモニタリングポストが危機に - 環科研・公衛研まもれ@大阪 


現在も予算も措置せず、行政としておろそかにされていますが、独立行政法人化されて、この調査研究は継続できるのでしょうか?

9月議会で可決された「中期目標」(大阪府から法人に対する指示)には、調査研究について、以下の記載があるだけです。

===

② 調査研究の推進

社会的ニーズに応えるために、調査研究業務を通じて最新かつ高度な技術や知見の習得に努めること。健康危機事象への対応に関することや地域特有の課題等、特に重要性や緊急性の高いものについては、効率的に調査研究を実施することができる体制を整備する等の取組を行うこと。また、質の高い研究を推進するため、国内外を問わず他の研究機関との連携を強化すること。

===


「特に重要性や緊急性が高いもの」はやってくれと指示していますが、具体的には何も言っていません。

きっと事業仕分けのごとく、「特に重要かどうかは、研究所が示せ」ってことになるでしょう。

だって、独法化しようとしている人々は、現場知らないし、知る気もないのですから。


独法化したら議会はもはや関与できません。


大阪府・大阪市は、議会答弁でも繰り返し「独法化により弾力的運営が可能となる」「それにより機能強化」と説明されていますが、限られた法人の予算の中で、「機能強化」が求められています。
疫学調査や、健康危機管理情報の専門部署、精度管理の専門部署などの設置を強化するとうたっています。それには、予算と人員配置が必要で、どこから捻出するのでしょうか?

シックハウスの調査は、「弾力的運営」によって、リストラ対象になる危険性は極めて濃厚です。

22の地方衛生研究所が協力してきた調査は、来年には21に減ってしまうのでしょうか。

 

結論。
何の担保もなく、独法化すな!

止めたい人、12・4集会へGO!

dokuhou-hantai.hatenablog.com