環科研・公衛研まもれ@大阪

橋下維新の大阪市解体(都構想)は許せない!大阪市立 環境科学研究所(環科研)、大阪府立 公衆衛生研究所(公衛研)の統合 · 独法化、反対。メール dokuhou.hantai@gmail.com ツイッター @dokuhou_hantai

都構想で1兆円超の節減効果 あるわけないやろ シリーズその4

7月11日に大阪市と府によって公表された、「都構想の1兆円の節減効果」の試算の結果報告書「大都市制度(総合区設置及び特別区設置)の経済効果に関する調査検討業務委託報告書」(全108ページ)(以下「報告書」という)の内容について、批判したいというコンセプトで、タイトルのシリーズ、第4回目です。

いやー、この試算の報告書を読んでて、しみじみ思いだすのは、2016年8月22日の「副首都推進本部会議」をウォッチしたときのことなんですよね。

(´-`).。oO

以下、当時のブログ記事から抜粋・加工して引用。

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(二重行政解消のからみで、大阪府と市の工業研究所の統合について)

上山信一・特別顧問:

すでに府と市の工業研究所とも合理化しており効率は良い。そのうえで、市の研究所の実績を見ると、大阪の宝だと実感。「スーパー公設試」は夢として色々なところで言われているが、大阪府と市には2つの宝がある、それを融合して、産業支援に活かしていく。それ以外の選択肢はないと思う。

 

当会の心のツッコミ:
なーにが「スーパー公設試」だよ!スーパーサイヤ人かよ。2つの宝をフュージョンさせたら戦闘力が急に増すんかい。現実離れしたことは二次元の世界でやってくれ。
まじめにやっている現場の人が恥ずかしく思ってしまうようなネーミングをやめろ。

 ===引用ここまで===

もう・・・あなたたち・・・いまだに、
ほんっっとに、スーパー公設試脳だよな!

って心の中で突っ込んでるんですけど、マニアックすぎて誰もわかってくれなさそうなのでブログ記事再掲してみました。(もとのブログ記事はここで読めます。)

今回、とりあげるのはシリーズ第2回に引き続き、病院などの府と市の経営統合による歳出減の効果額について(のデマ)なのですが、データの細部のことではなく、全体的な問題を指摘したいと思います。

実際、工業研究所は2017年4月に、形だけの経営統合(スーパー公設試(笑))(笑えんわ!怒り)をさせられてしまいましたが、
「統合してスーパー公設試になってんから、戦闘力アップするんちゃうん」みたいな話は、三次元ではあり得ないですよ。
ってことを、まじめに説明したい。

そもそも、経営統合のような、とても大きな改変をともなう行政施策が、どう検討されるべきか。

大きな改変にはメリット・デメリットがつきものですので、失敗は許されない。
だから、ひとことでいうと、意思決定には、科学的プロセスが要る。
具体的には、以下のプロセスだと考えます。

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(表は当会作成。イラストはフリー素材icooon monoを使用。)

このような流れで、行政と市民(議会)とのあいだで、充実した議論がなされ、優れた施策であると結論づけられたら導入する、ということが必要です。

仮定や分析結果が不十分であれば、採用するべきではないし、
十分であっても、総合的に議論して採用されなければいけない。

しかし、
維新府政になってから、とりわけ、ごり押ししたい都構想やカジノに関して、これらのプロセス全てがデタラメ・デマになっていませんか?

①仮定もデタラメ・デマ、
②仮説の検証・分析もデタラメ・デマ、
③最後の議論もデタラメ・デマで乗り切って、強行採決をねらう。

そんな状況になっているでしょう?

信じないかた向けに、
まずは、①仮定・仮説と、②仮説の検証・分析について、
デタラメ・デマだと思う理由を、同じ「病院改革」をテーマにした、内閣府の報告書(2016)と、都構想の試算の報告書(2018)を比べることを通じて、説明してみます。

いかに都構想の試算の報告書の①②がレベルが低すぎるか、わかっていただけるかと思います。

内閣府の「公立病院改革の経済・財政効果」報告書との比較

病院改革の経済効果については、
2016年に内閣府が公表した、「公立病院改革の経済・財政効果について」のレポート

http://www5.cao.go.jp/keizai3/2016/08seisakukadai10-0.pdf

というのがあります。

これは、
「地方において急速な人口減少と高齢化が進む中、地域医療サービスの安定的供給と、自治体の財政負担の抑制を両立させるために、病院の経営改革は喫緊の課題である。」
という問題意識を背景に、
2007年総務省の誘導のもとで「公立病院経営改革プラン」の取組があった期間(2007~13年度)を中心に、個別病院の経営データ(全632病院のデータ)に基づき、公立病院の医業収益及び費用の変化を、病床規模別・立地条件別に検証した。

というもの。

つまり、今後の、病院の経営改善の要素を見つけ出そうということ。
都構想の試算の報告書の主旨とも、かなり、ドンピシャで、重なっていますね。

なんらかの分析をするとき、事前に、類似の既存研究の調査とマッピングをするのは、当たり前の下処理ですから、
都構想の試算の報告書は、2018年に作成されたのですから、当 然!2016年に公表された内閣府の報告書も、事前に調査・参照されたことでしょうね!

さて、2016年の内閣府の報告書に戻ります。
えっと、分析方法は、
「公立病院は立地や規模といった所与の経営環境に大きな差異があるため、立地条件については不採算地区病院の該当条件によって、また規模については病床数によって、サンプル病院全体を4分類して分析を行った。」

なんですと!?

疑問1)おいおい、2016年の内閣府の報告書の時点で、病院を立地と規模の4分類にわけて分析しとるがな。都構想の報告書は全病院いっしょくたにやってもてたけど、粗すぎひんか、大丈夫か!?


実際、内閣府の報告書の表を見ると(以下)、
立地と規模での4分類(分類ⅠからⅣ)ごとに、「収入が増えたか」、「費用が増えたか」でさらに分類すると、立地の違い(ⅠとⅡ)でも明確な差が見られ、規模の違い(ⅠからⅣ)でも差が出ています。

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疑問2)いくら都構想の試算が、事務職員の人件費だけを扱っているとは言え、少なくとも経営改善の方法を考えるなら、小規模で不採算立地の病院を大病院と同列のデータにしたらダメなんじゃないでしょうか。
(あげく、相関がないし。)

 

これだけではなくて、
内閣府の報告書では、比較検討するためのデータの前処理が、非常に注意深いんですね。
例えば、「収入」1つ取っても、自治体からの繰入金の寄与度が大きいので、それを排除したデータで統一して、比較する。
「支出」も、自治体からハード整備費用をもらった病院とそうでない病院を同列に比較できないので、それらの整備費は除いたデータで比較する。

疑問3)これに比べて、都構想の試算の報告書での全病院プロットのグラフの粗いこと。
縦軸の人件費の幅が、ゼロ円から20万円と、
お値段びっくりなななんと!(ジャパネットたかた)になってるじゃないですか。

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無処理にもほどがありますよね。
まずプロットしてみて、あかんなと思ったらデータを前処理して、かつ、病院の特色で分類したほうがいいんじゃないかな、って常識のある分析者なら考えるんじゃないでしょうか。病院の特色で、事務の量や質に違いがあるでしょうし。


内閣府の報告書に戻りますが、
分析も、単に相関があったことをもって、因果関係があると取り間違えることがないように、
この十年の公営病院の経営の傾向、地域の人口減少による経営悪化の可能性といった、他の要因の検討を加え、何層もの比較をしています。

その結果として、
・全体的な傾向としては、入院にともなう収益が、収入が増える要因として大きく、かつ大病院ほど有利だということ
・一部の傾向として、経営努力による医薬材料費の削減の可能性が推測されるということ
などを明らかにしています。
(内閣府報告書P.30ほか)


ちなみに、ツイッターで「内閣府の報告書にも、相関グラフのあてはまりの良しあしを表す、決定係数R2が、0.18程度とかなり低いものも扱っているくだりがある」と、ご意見をいただいたことがあって(ご意見、とてもありがたかったです。)
それについても考えを述べておきたいです。
以下はそのグラフです。

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たしかに、このグラフをもって、R2=0.18のグラフだけ「正の相関がみられる」「他は見られなかった」としているのは、何を判断基準にしているのか不明です。
なので、ここは内閣府報告書での疑問点の1つではあります。

しかし、「入院患者よりも外来患者のほうが、人口構成や高齢化人口の高さに影響を受ける」という仮説を、定性的な説明と、このグラフを含めたいくつかの検証材料によって示していたこと、このグラフの結果を過大に評価していないこと、などから、そう違和感の残る内容ではなかったです。

ながくなりましたが、
もう一つ指摘しておくべき点があります。

内閣府の報告書の結論では、
2007年からの10年で、独立行政法人化などの「経営改革」がおこなわれた結果、
経営が悪化している病院のうちの一部で、医師、看護師、医療技術員の配置数の不足などによる病院側の医療供給機能の低下が、経営悪化の要因の可能性がある
と指摘している点です。

そして以下のようにまとめています。
「公立病院改革の実施期間における経営改善の度合いとその構造には、病院の規模や立地条件といった環境によって、相当な差異が認められた。今後の人口減少等が一層進む中で、公立病院が地域のニーズに応じ、採算確保が困難な特殊医療も提供しつつ、独立採算を目指すためには、各公立病院が直面する環境に合わせた経営改革の処方箋を描くことが必要である。」

どちらかというと病院改革が必要だという問題意識からはじまっている内閣府の報告書で、この結論、注意深く受け止めるべきではないですか?
この内閣府報告書が2016年に出て以降に、病院改革を検討しようという自治体なら、この報告をふまえての、仮説の設定と、その検証が必要ではないですか??


それに比べて、2018年の都構想の試算の報告書はこう。
===
病床数2,572 床の大阪府立病院機構と、同1,524床の大阪市民病院機構を経営統合すれば、合計4,096 床という規模の地方独立行政法人が登場することになり、これによってどの程度のコストを抑制できるか
===

いやだから、それスーパー公設試やん!!
(って今ならみんなでつっこめるよね?)

 

維新関係者の方々には、どうかわかってほしいです。
他の関係者の方々には、9月議会で徹底議論をしてほしいです。
(当会ブログ記事は全て、引用、転載歓迎です。)

最後の議論を「デマで押し通されて終わりました」とならないように。

次回は、都構想とは、維新の経済政策とは、カジノとの関係性とは、
といった内容で、このシリーズを終えれたらなぁと思っています。