環科研・公衛研まもれ@大阪

橋下維新の大阪市解体(都構想)は許せない!大阪市立 環境科学研究所(環科研)、大阪府立 公衆衛生研究所(公衛研)の統合 · 独法化、反対。メール dokuhou.hantai@gmail.com ツイッター @dokuhou_hantai

まとめページ。「大阪市立環境科学研究所」「大阪府立公衆衛生研究所」の統合・独法化問題(2018/06/28最終更新)

この記事は、全体まとめページです。(随時最新情報に更新し、トップに配置。)

はじめて来たかたに、ひととおり論点を知ってもらえるように、「研究所とは?」「大阪維新の統合・独法化案は何が問題なの?」ほか、議会動向など必要な情報をまとめています。 

2017年4月に、統合・独法化が強行されました。
当会は、そのときから、長期戦を見越して活動を一時停止していましたが、約1年の充電期間を経て、活動を再開します。

ブログ活動の再開にあたり、まずは、まとめページを時点更新しました。順次発信していきます。(2018.6.28)

 

(最終更新は2018/06/28)

  1.「大阪市立環境科学研究所」(環科研)、
  「大阪府立公衆衛生研究所」(公衛研)とは?
(2017年4月に統合・独法化され、現在の名称は「地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所」に改変されました。・・・けんこうあんぜんきばんけんきゅうじょ・・・早口言葉かよ!
(したがって、以下からの説明は、2017年3月31日以前の、本来の姿である直営の府立・市立の衛生研究所としての説明となります。)



研究所の写真は以下です。

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(大阪市立環境科学研究所(旧称)の写真)

 

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(大阪府立公衆衛生研究所(旧称)の写真)


 両方とも、「地方衛生研究所」と呼ばれる行政機関です。

地方衛生研究所は、すべての都道府県・政令指定都市に設置が求められていて、現在、全国で80か所にあります。(ちなみに、すべてが公立運営。)
大阪府内では、4か所あります。(大阪府、大阪市、堺市、東大阪市の4自治体が運営)


地方衛生研究所では、
新型インフルエンザやデング熱、結核などの感染症、O-157などの食中毒、農薬混入、危険ドラッグ、放射能、水道水の質といった、私たちの健康にかかわる検査、調査や研究をおこなっています。
最近では、ジカ熱がニュースで聞かれますが、そういった新たな感染症も、国と連携し、迅速な検査・研究体制がしかれます。

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また、保健所と一体となって、感染症や食中毒の原因究明や、感染拡大を防ぐための公権力行使(検査や、封じ込めなど)の根拠となる検査をおこなっています。

プラス、大阪市立環境科学研究所では、大都市である大阪市の特性から、衛生研究所としての機能に加えて、PM2.5や光化学スモッグなどの都市環境問題の研究機能も持ち合わせています。

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 2.大阪維新が「環科研」「公衛研」を統合・独法化しようとした経緯

●2012年9月
府市統合本部会議で、2015年に「都構想」(大阪市廃止)を実現する計画の第1弾として、「2014年4月に研究所を統合・独法化する」という方針を決定


●2013年3月
方針決定からわずか半年で、統合・独法化の「箱」である「独法組織の定款」(ていかん)が上程され、府議会、市議会とも可決。
具体的に何をやるかのあり方が全く決められないまま、「地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所」という「箱」だけが決められました。
その当時、「業務も職員も変わらない」という府と市の説明を、自公が信用し賛成。


●2014年
研究所の内部から反対意見が強く起きてきたこと、府と市の検討が不十分で、説明が嘘であることの発覚、秘密裡のリストラ計画の発覚など、大阪維新の暴走への反転攻勢がなされます。

(同じころに堺市長選で大阪維新が敗北。ブレーキがかかってくる。)

自公が反対に回り、関連案件が大阪市議会で3回否決。

●2015年
都構想そのものが、2015年5月に住民投票で否決。


●2015年11月
ダブル選、与党の大阪維新の吉村大阪市長が選ばれる。
研究所は再び政争の具に。

●2016年2-3月
吉村市長は、橋下市長時代の案件を一言一句たがわず継承し、2016年2月大阪市議会で、4回目の同じ案件を上程。
自公など野党が反対(2月22日委員会)。
3月1日、吉村大阪市長は、「大阪市立環境科学研究所」を「衛生」と「環境」に分離する「大阪市立環境科学研究センター」の新設案件を、「修正案」として上程。

3月7~15日の委員会審議、3月22日の委員会採決で採決保留。異例の事態。
しかし、徐々に公明が大阪維新の「都構想の既成事実化」に取り込まれる。
3月28日委員会で可決されてしまう。(ただし、附帯決議がつく。)

 

●2016年
4月19日、副首都推進会議(第3回)では、2017年(平成29年)4月設立をめざすという無理やりなスケジュールが提案される。

5月、突如出された施設一元化案の補正予算に、維新・公明のみ賛成で可決。
8月22日、副首都推進会議(第4回)で施設一元化方針。
9月議会では府、市議会とも、維新・公明のみ賛成で可決。

●2017年
4月1日の3日前の3月29日という、あり得ない日付で国が独法化の認可を出し、4月1日に独法化が強行された。

これが現段階です。


以上のように、府と市の衛生研究所の統合は、地下鉄、バス、水道、大学、市立工業研究所などと並んで「二重行政のムダ」「大阪市の解散」からスタートした都構想の一環であり、かつ、その中で一番前倒しでやるという、実績づくりのターゲットです

そこからして「機能強化」などウソであり、以下のような問題が生じます。

 

3.統合・独法化の問題点と、大阪維新の説明のウソ

(1)統合による機能強化はなく、逆にマイナスが次々起きている。

大阪市理事者と大阪維新は、「新たな感染症や大規模な食中毒等の広域的な健康危機事象」に対し、「(統合・独法化により)スケールメリットを生かし、統合により倍増する研究員を集中的に投入し、初動体制を素早く構築することができる」などと繰り返し説明してきました。

 しかし、組織を統合しても研究員が増えるわけではありません。広域的な健康危機事象では、2つの研究所とも大量の検査にあたってきたのであり、組織統合すれば研究員を集中的に投入できるわけはありません。

 また、組織統合しても施設は統合される予定はありません。環科研は耐震化工事が終わったばかりであり、公衛研は平成30年度中に近隣の健康科学センター内に移転が決まっています。施設統合のスケールメリットもないのです。 
 まったく当初案と違う、施設統合案が2016年4月になって持ち出され、なんと追加費用100億円!!環科研の耐震化工事は3億円かかったそうですが、ムダにするのか。
当初のメリットの説明とは180度方向がちがっているし、施設統合に100億円かけても独法化したら機能は低下するし。本当に信用ならない市政です。(2016/10/31追記)

 すでに府と市の研究所は、全国平均より少ない人員で、ここ数年、欠員の人員補充さえなく、機能低下がさらに深刻化。
(関連記事:衛生研究所の本当の解決すべき問題ー研究職はすでに58%に削減され、中核市で広域行政は空洞化 - 環科研・公衛研守れ@大阪
(関連記事:環科研の職員数は現状でも平均以下。統合・独法化でリストラでは、最低レベルも保てない - 環科研・公衛研守れ@大阪

 さらに統合独法化を既成事実化するためだけに、府と市は庶務システムを不正な随意契約で強行導入し、税金5千万円をムダに使いました。
(関連記事:衛生研究所の統合組織用の庶務システム(5千万円)の発注で、不正な随意契約がされていた! - 環科研・公衛研守れ@大阪

 さらに、公衛研所長は不適切な組織運営をやり、職員から人事委員会にうったえられました。
(関連記事:山本容正・大阪府立公衆衛生研究所長は、独法化案の具体的検証を全くやらず、現場からの意見を封殺した。これで「機能強化」になるはずがない。 - 環科研・公衛研守れ@大阪

 
 さらに、独法化をするためだけの無計画な研究所移転方針により、1億円がムダになりました。
(関連記事(記事の後半で記述しています):4/19 副首都推進会議(第3回)まとめ。やはり、研究所独法化は止められる。 - 環科研・公衛研まもれ@大阪 )


(2)独立行政法人化で、重大な健康危機事象に対応不能となり、機能も「リストラ」される

独立行政法人とは、行政が「自ら主体となって直接に実施する必要のないもの」について、行政から切り離し、「効率性の向上、自律的な運営を図ることを目的とする制度」(総務省HP)とされています。

地方衛生研究所は、市が答弁したような「データの検査」を行うだけの機関ではありません。
新興感染症や食中毒などの遺伝子解析をふくめ、保健所がおこなう疫学調査(疑い患者の権力行使による検査など)を一体で担い、政策判断の根拠をつくる、健康危機管理対応がメインの機能です。その責任は大阪市長にあります。

したがって、衛生研究所は、何より行政との一体性、連携の強化が最優先です。

また、直営であれば、大きな大阪市という予算のスケールメリットで、柔軟な予算流用など緊急対応が可能でしたが、法人になれば法人の小さな予算の中でやりくりしないといけません。
6年前の新型インフルエンザのときも、大量検体をさばくのに必要な試薬、休日出勤などの人件費などは直営だから速やかに予算流用できています。
別組織になると、間違いなく、滞ったり、市や府が渋ったり、になります。
定款などにも、市や府の責務は明記されていません。

日常検査でも、公衆衛生をまもる業務は、お金をもうける仕事ではありません。独立行政法人では、限られた予算の中で、住民の健康のための検査が「ムダ」とされ、「企業の金もうけ」を目的とする研究所に変えられてしまうおそれがあります。

実際、統合・独法化を推進した上山信一特別顧問は、研究所の役割を「主に産業支援」とし、地方衛生研究所の「リストラ計画」を指示していました。

与党・大阪維新の議員もツイッターでリストラを公言しています。
(関連記事:「危機管理の要員」をリストラして非常勤で対応?-維新・井戸議員の暴論(その2) - 環科研・公衛研守れ@大阪

 

日常検査の予算が削られれば、短期雇用の職員が増え、職員の技術継承は途絶えてしまいます。

ウイルスは日々進化します。感染拡大をふせぐ仕事は、日常から絶え間なく経験をつみあげる営みです。それを「単なる作業」「外注化できる」と切り捨て独法化しては、感染拡大を止める技能は失われます。危機事象には対応できません。


かつてイギリスでは、「小さな政府」の方針のもと、さまざまな行政機関が民営化され、衛生研究所も独立した組織になりました。しかし、その結果、公衆衛生は大きく後退し、イギリス政府は、健康危機管理に関わることは「民営化」「独立行政法人化」はなじまないと判断し、2013年に再公営化されています。

独法化の失敗、やり直しに伴う住民の健康リスクと税金負担は甚大であり、独法化は止めるべきです。

 

(3)2016年4月からの感染症法改正の主旨に逆行

2016年4月に施行される感染症法の改正では、地方衛生研究所の機能を強化するため、自治体による「検査の責務」が法律に明記されました。厚生労働省は「地方衛生研究所の有する機能の法律上の明確化」としています。

新型インフルなどの健康危機の高まりを受けて、全国的に予算削減・弱体化の傾向にある地方衛生研究所の現状に、国がそれではまずいと認識しているということです。

それを独法化とは完全に逆方向です。

 (関連記事:2016年4月感染症法改正について―環科研の統合案(独立行政法人化)は、法改正の意義を理解し、機能強化のための見直しを ※調氏に参考人の意見聴取を要望したい - 環科研・公衛研守れ@大阪

 

(4)「衛生」と「環境」を分離し、縮小させるデメリット

前述したように大阪市立環境科学研究所は、同じ施設・同じ組織に、「衛生」と「環境」を持ち合わせる強みをもっていたのに、大阪維新案はそれを「分離」「一部事業を除いて廃止」させるもので、デメリットしかありません。

(関連記事: 環科研の環境部門の廃止・引き揚げは、大阪市が公害対応から手を引くことを意味する - 環科研・公衛研守れ@大阪
(関連記事:大阪市立環境科学研究所を、「衛生」と「環境」に分離したらできなくなる実例3つ - 環科研・公衛研守れ@大阪
(関連記事:前記事の補足、と言いながら本質論。(大阪維新支持の人にも読んでもらえたら) - 環科研・公衛研守れ@大阪
※特に3つ目の関連記事は、「なぜここまで反対するのか」の根本となる、環境分野の研究のあり方、どんな発展を望むのか、を書いたつもりなのでご一読いただけたら。

 

(5)具体的なメリット、デメリットの検証さえ行わない、ずさんな案

関連記事:衛生研究所の統合で、どうなるのかまだまだ検討は不十分(感染症情報センターはどうなる?) - 環科研・公衛研守れ@大阪

関連記事:衛生研究所の統合は、まだまだ検討は不十分(2)(HIV検査・研究はどうなる?) - 環科研・公衛研守れ@大阪

関連記事:大阪府に、5年前の「独法化はなじまない」との報告が存在した - 環科研・公衛研守れ@大阪

関連記事:横浜市が「独法化は困難」とした理由を、大阪では検証したのか - 環科研・公衛研守れ@大阪

 

  

 

4.統合・独法の反対討議ピックアップ

 ●2014(H26)年12月17日 石原信幸議員(公明党)

民間に任せられるものは任せたらいいが、最終的に行政権限を発動する限りは、間違ってないことの裏づけをきちっと持った上で発令していくということになりますので、行政と、そして環科研が一体となって成し得ていくもの。

正確に積み重ねたデータと研究、そして黙々と市民の生活・安心・健康を守ろうとするその蓄積というのは、失ってしまえばもう二度と取り返すこともできない。

 

●2014(H26)年12月17日 多賀谷俊史議員(自民党)

いわゆる効率論とか組織論で一緒にすべきだとか、二重行政だというふうなことで一緒にすべきだという意見がまかり通っておるんですけれども、実際には大阪市民にとってどうなのかということをしっかりと議論すべき。

大阪市の責任をしっかりと持つあり方を改めて検討し直す必要がある。

 

●2015(H27)10月2日 西川ひろじ議員(自民党)

5月の住民投票で都構想が否決された今、政令指定都市である大阪市存続を前提に考えるべき。統合ではなく、両研究所の連携をこれまで以上に強化し、両研究所の機能強化を図ることが重要。

政令指定都市として責任を持って保健衛生行政を行っていく必要があり、行政と一体となって運営できる環境科学研究所は不可欠である。

 

●2015(H27)10月2日 山田正和議員(公明党)

両研究所の役割は明確に分かれておりまして、二重行政というものではない。

環科研は衛生研究所と環境研究所の機能をあわせ持つことが強みであり、機能を維持し、充実させる必要がある。

広範囲の連携に取り組んで、両研究所のさらなる連携強化を図っていくべき。

提案の中身が変わってないのでありますから我々の考え方が変わるのもおかしな話。


●2016(H28)年2月22日 委員会

記事:
本日(2月22日)、大阪市議会 委員会。採決保留。公明・山田市議の反対討論をピックアップ。 - 環科研・公衛研守れ@大阪

記事:
本日(2月22日)、大阪市 議会 委員会。採決保留。自民・西川市議の反対討論 支持します! - 環科研・公衛研守れ@大阪

 

2016(H28)年3月~委員会

記事:
本日(3月10日)、大阪市 委員会。大阪維新・飯田市議の茶番質疑の議事録。 - 環科研・公衛研守れ@大阪

記事:
本日は自民・西川市議。大阪市委員会での質疑。(3月11日) - 環科研・公衛研守れ@大阪

記事(自民・西川市議、共産・井上市議の反対意見は良かった。):
まったく許せない!3月28日民生保健委で研究所統合独法化が、大阪維新、公明の賛成で可決!(質疑から) - 環科研・公衛研まもれ@大阪