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環科研・公衛研まもれ@大阪

橋下維新の大阪市解体(都構想)は許せない!大阪市立 環境科学研究所(環科研)、大阪府立 公衆衛生研究所(公衛研)の統合 · 独法化、反対。メール dokuhou.hantai@gmail.com ツイッター @dokuhou_hantai

2016年4月感染症法改正について―環科研の統合案(独立行政法人化)は、法改正の意義を理解し、機能強化のための見直しを ※調氏に参考人の意見聴取を要望したい

具体的な問題点 本質論 資料(議会質疑、報道など)

過去記事でも何度か触れててきましたが、2016年4月の感染症法改正と独立行政法人化の問題をまとめます。

環境科学研究所の統合(独立行政法人化)については、2013年(平成25年)3月に法人化の定款が可決され、同年12月には大阪府議会は研究所の廃止条例等を可決している(市会は否決)。
しかし、その後、国において、「衛生研究所での感染症の検査は、市長の責務」とする法改正がされるのは市会議員のみなさまはご存じなのでしょうか?
この状況変化を踏まえれば、それ以前に方針化された統合・独法化案のみを審議するのはもはや有効ではありえません。新型インフルエンザ、エボラ等に対する、大阪市としての危機管理体制を明確にし、従来の統合案(独立行政法人化)の見なおしが求められます。

まず、改正感染症法の条文と法改正の趣旨を確認したいと思います。

 

●改正感染症法(2016年(H28年)4月1日施行)で「衛生研究所での検査と国への報告が市長の責務」と明確に

<感染症法改正の概要>(厚労省資料)
厚生科学審議会の資料はこちらから

感染症部会審議会資料 |厚生労働省

f:id:dokuhouhantai:20160218005846p:plain

 
<改正条文>
第15条3 都道府県知事は、必要があると認めるときは、第一項の規定による必要な調査として当該職員に次の各号に掲げる者に対し当該各号に定める検体若しくは感染症の病原体を提出し、若しくは当該職員による当該検体の採取に応じるべきことを求めさせ、又は第一号から第三号までに掲げる者の保護者(親権を行う者又は後見人をいう。以下同じ。)に対し当該各号に定める検体を提出し、若しくは当該各号に掲げる者に当該職員による当該検体の採取に応じさせるべきことを求めさせることができる。
 一  一類感染症、二類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者又は当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者 当該者の検体
 二  三類感染症、四類感染症若しくは五類感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者又は当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者 当該者の検体

 三  新感染症の所見がある者又は新感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者 当該者の検体
 四  一類感染症、二類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症を人に感染させるおそれがある動物又はその死体の所有者又は管理者 当該動物又はその死体の検体
 五  三類感染症、四類感染症若しくは五類感染症を人に感染させるおそれがある動物又はその死体の所有者又は管理者 当該動物又はその死体の検体
 六  新感染症を人に感染させるおそれがある動物又はその死体の所有者又は管理者 当該動物又はその死体の検体
(以下、略)
第15条4 都道府県知事(※)は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の規定により提出を受けた検体若しくは感染症の病原体又は当該職員が採取した検体について検査を実施しなければならない。(※ 保健所設置市においては市長)


<法改正の趣旨>
・2014年(平成26年)11月6日 参議院厚生労働委員会
法改正の趣旨答弁(永岡厚生労働副大臣)
「現行の感染症法では、知事の検査の明確な規定がないこと、感染症部会で、技術の減少などが懸念されていた。知事による検査の実施義務の規定を設け、都道府県の検査機能を位置付けることで、今後、地衛研の機能も維持向上されるものと考えている。地衛研について、国立感染症研究所との連携の強化を図るとともに、感染症対策におけます位置付けをより明確にすることについて検討してまいりたい」

→衛生研究所の法制化検討がはじまっている。

・2014年(平成26年)11月6日 感染症法改正・附帯決議(全会一致)
「地方衛生研究所が果たす役割の重要性に鑑み、地方衛生研究所について、感染症対策における位置づけを明確化し、国立感染症研究所との連携が強化されるよう配慮すること」

・2015年8月27日 足立参議院議員に対する厚労省回答
「感染症法の改正において、都道府県における情報収集体制を法律上に位置付けることにより、結果として地衛研の有する機能の法律上の明確化が図られている。」

地方衛生研究所での感染症の検査は、病原体が検出された確定患者に対する入院措置、就業制限等の公権力行使の科学的根拠となるものであり、独法化はなじまないと横浜市や過去の大阪府の検討では結論付けられています。

大阪府に、5年前の「独法化はなじまない」との報告が存在した - 環科研・公衛研守れ@大阪

横浜市が「独法化は困難」とした理由を、大阪では検証したのか - 環科研・公衛研守れ@大阪

統合独法化を決定した府市統合本部会議や維新の井戸議員は、この検査について「どこがやっても同じ」と、自治体からの切り離しが可能と主張しています。
しかし、感染症対策の公権力行使とは、病原体が検出された確定患者に対するものだけではありません。感染拡大防止のために、患者の接触者、疑似症患者、感染していると「疑うに足りる正当な理由のある者」から検体を採取し、ウイルスや病原体を同定した場合は入院勧告等を行っています。これを積極的疫学調査と言い、感染症法では法定受託事務(国の責任とされ国庫負担、補助事業)となっています。

この検査は、自治体(保健所)による公権力行使であり、民間検査機関や病院ではできません(※このことに触れない元保健所医師の井戸議員は、よほど仕事をさぼっていたか、悪意があるのかどちらかでしょう)。また、科学的根拠のない行政の対策は、逆に社会的混乱をもたらすものですから、政策判断の根拠として正確性が求められます。
今回の感染症法改正は、この衛生研究所での検査、研究が自治体のリストラ対象となって機能低下している現状を改善させるため、検査と国への報告を自治体に義務付けて明確にする意味があります。

この法改正の意義について、厚労省の検討過程に参加されていた、地方衛生研究所全国協議会会長の調氏が解説しています。市会議員さん、必読です。吉村市長は「統合で機能強化」と繰り返していますが、「機能強化」を本当に図りたいのであれば、現場の現状と課題をまず明確にすることなしに、解決策たりえません。

 

●『公衆衛生』2016/01/15 地方衛生研究所全国協議会会長の調氏「地域保健法体制下の地方衛生研究所の現状,課題と将来像」について

http://medicalfinder.jp/doi/abs/10.11477/mf.1401208343

800円で購入できます。現場の現状と課題、法改正の趣旨を理解するため、市会の民生保健委員会での参考人にお呼びすべきと思いますがいかがでしょうか?衛生研究所の独法化は全国初となるものであり、市議会の判断の責任は重大です。
以下、ポイントを抜粋します。

(地方衛生研究所の役割)
・厚生労働省が策定する「新型インフルエンザ対策ガイドライン」および各種の特定感染症予防指針などに地方衛生研究所の役割が明確に規定されていることから、厚生労働省は地方自治体に地方衛生研究所が機能していることを前提に施策を決定していることは明らか
・地方衛生研究所の重要な使命は住民に健康被害をもたらす感染症や食中毒の原因となるウイルス、細菌などの病原体、あるいは化学物質を同定することにより、自治体の対策に必要な科学的根拠となるデータを提供し、感染症の拡大防止、食中毒の早期探知・解決を図ることにある。
・検査の現場を持つ地方衛生研究所は、新たな病原体や病原性の発見など大学ではなしえない貴重な研究成果を上げてきている。検査業務と調査研究は両者が一つの場所で行われ、互いに補完し合う車の両輪

(地方衛生研究所の現状と課題)
・重要性がわかりにくい地方衛生研究所は、近年の地方分権と地方自治体の予算の困窮により、人員、予算削減のターゲットとなっており、本来備えるべき検査機能さえ維持することが危ぶまれる自治体も存在する
・2003年から08年の5年間で平均職員数が13%減、予算30%減、研究費47%減となっている。自治体の公務員数の削減率はこの5年間で7%となっていることから、地方衛生研究所の人員削減は公務員の平均削減率よりもはるかに早く進行している
・多くの自治体で急速に機能が低下しており、感染症の健康危機管理に重要な検査診断が困難となる

(2016年4月感染症法改正の意義)
・この現状を改善するため、この改正では、法に基づいた感染症の検査と国への報告が都道府県知事に義務付けられ、自治体における検査の精度管理が新たに省令で規定された。この法改正の意義を自治体職員(※議員もです)が正しく理解し、感染症の検査体制が維持、強化されることを期待する。
・地方衛生研究所の感染症検査機能の低下に危機感をもった厚生労働省は、感染症法を改正し、都道府県知事に検査の責任をもたせることにより検査精度を確保する方針を立てた。地方衛生研究所の設置を義務付けることが困難であるならばその検査業務を法で規定することが一つの方策であることが議論された。

(地方衛生研究所のあり方)
・実際に自治体で本庁、医療機関との連携を取りながら検査を行っていると、検査結果をもとに、患者の入院措置や食中毒に対する行政処分措置がとられるため、迅速性、正確性が問われており、日ごろからの信頼関係が重要であることが実感される。したがって都道府県などの行政機関が道州化により統合されない限り地方衛生研究所もまたそれぞれの自治体に必要であると考えられる。

私の訴えたいことは、ほぼ網羅されています。吉村市長の言う「スケールメリット」云々は、直営のままでも、すでにある研究所間の協定に基づいても可能でしょう。組織をいじくるメリットはなんでしょうか?
法人化して行政から切り離すことのデメリットは多くあります。政令市の大阪市の存続を前提にすれば、大阪市長の責務とされる衛生研究所の業務を切り離すことはありえません。法改正の趣旨に逆行するものとはっきり言えます。

 

●独立行政法人とすることの具体的なマイナス

 そもそも、地方独立行政法人とは、「地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないものと地方公共団体が認めるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的」とするものです。衛生研究所の検査は、市長の責務であり、「直接に実施する必要」です。感染症法改正の趣旨を踏まえれば、独法化は地方独立行政法人法の趣旨にも反するものであり、ただちに中止すべきです。


大阪市が従来から説明してきた「独立行政法人のメリット」は、法人による自由な裁量、任期付き職員など流動職員を増やせるなどが言われていますが、どれも、行政依頼検査の確実な実施、技術継承という健康危機管理の強化の観点からはデメリットです。
大阪市は、「定款で健康危機管理に対応する法人と定めている」から大丈夫と言いますが、少なくとも以下の4点から大丈夫とは言えません。

 

独立行政法人は、限られた運営交付金の中で、「自由な裁量」で効率的な業務を行うことが求められます。検査業務は、やればやるほど赤字になります。行政からの依頼にこたえるため、法人は成果の見えにくい調査研究を縮減したり、非正規化によって人件費をカットしていくことになります。その結果、いざ新興感染症などの対応が必要な際には、その機能が失われていたというリスクがあります。

 上山顧問や井戸議員が、統合により検査機能のリストラ、外注化、非正規の拡大をやると言ってきましたが、

上山信一・大阪府市特別顧問から引用リツイートありました。それに対する公開質問です。 - 環科研・公衛研守れ@大阪

自民市議団のみなさまへー井戸市議のリストラ発言を放置して賛成するのですか?統合は機能強化が前提です。 - 環科研・公衛研守れ@大阪

まさにリストラのためのツールとして独法は最適なのです。リストラをせず、機能強化というのであれば、独法という制度はとるべきでありません。

 

感染症の検査は、国庫補助事業ですが、補助金は運営交付金の財源には充当できません。したがって、感染症の検査は運営交付金とは別枠で、大阪市から法人への委託契約によって依頼することになります(そしなければ、法人化で市の財政負担が増えます)。しかし、委託契約である以上、特定の法人に委託するには「随意契約理由」が求められます。大阪市が新法人に検査を委託する行政計画や協定などの担保はありません。費用だけで比較して、部分的に民間検査機関に外注が進むことは必至です。いくら法人が「検査やります」と言っても、大阪市が委託をしなければ研究所の検査に基づく研究データは集約されず、疫学調査機能は低下するリスクがあります。

 

新型インフルエンザ等の健康危機対応では、大量の検体を衛生研究所でさばいていくことになります。そのためには、検査試薬の費用、休日出勤等の人件費の確保が必要ですが、限られた運営交付金の枠内では法人経営を圧迫します。直営であれば、大きな大阪市という予算のスケールメリットで、柔軟な予算流用など緊急対応が可能でしたが、法人になれば法人の小さな予算の中でやりくりしないといけません。追加の運営交付金を交付するためには議会の議決を要するため、財政当局はやりたがりません。結果、新型インフルエンザ発生時には、その対応に集中するためには、他の大事な結核や食中毒等の検査、研究費用をカットして充当することしかあり得ません。

 

感染症の疫学調査は、保健所と研究所が一体となって検査・調査を行ってきました。バラバラに発生しているように見えるO‐157やノロウイルス等の事例について、研究所は遺伝子解析から同一原因の集団発生かどうかを解析していきますが、それは同時に保健所の疫学情報(だれが、だれと接触してきたか等)をあわせて解析していくものです。行政から切り離されれば、そうした疫学情報の共有は委託契約の範囲内に縛られ、迅速な対応に支障が生じるリスクがあります。

 

以上の4点について、大阪市は検証と対策を示しているでしょうか?否です。独法化ありきで押し進めてきた結果、感染症対策の強化に必要な検討がまったくされていません。こんなことが許されるでしょうか。

感染症法改正で、検査は大阪市の責務と明確になりますが、その責任を取れる体制なのか、大阪市としての判断が問われています。市議会議員のみなさんの責任は大変重大です。

●国は「国立感染症研究所は、感染症に係る国の重大な危機管理に直結する業務を行っているため、独立行政法人化していない」(秋葉・厚生労働副大臣答弁(2013(H25)年5月9日))とするが、地方衛生研究所も同じではないか。

 国は感染症対策については国の責任で行うと明確にしています。大阪市は、環科研で行う新型インフルエンザ等に対する検査、研究について、重大な危機管理に直結する業務ではないと言えるのでしょうか?重大な危機管理に直結はするが、法人でも可能とする担保はあるでしょうか?
 全国80の衛生研究所もどこも法人化はしていません。大阪市会の判断が問われています。

【結論】状況の変化を踏まえ、統合の経営形態(独法化)については、再検討が必要。