環科研・公衛研まもれ@大阪

橋下維新の大阪市解体(都構想)は許せない!大阪市立 環境科学研究所(環科研)、大阪府立 公衆衛生研究所(公衛研)の統合 · 独法化、反対。メール dokuhou.hantai@gmail.com ツイッター @dokuhou_hantai

2月15日吉村市長の環科研・公衛研の視察まとめ

報道によると、2月15日に吉村市長が公衛研と環科研を視察し、職員とも意見交換して統合の必要性をアピールしたとあります。
2月16日の本会議を前に、視察し、マスコミにアピールするとは、いかに衛生研究所の統合・独法化にこだわっているかがわかります。

ABC
http://news.goo.ne.jp/article/abc/region/abc-20160215009.html
吉村市長は、「研究の内容は重なっている部分が非常に多くあったので、今回の統合はコスト削減ではなく機能強化が目的」と説明

NHK関西NEWSWEB
http://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20160215/5800441.html
吉村市長は記者団に対し、「コスト削減ではなく、機能統合を図って公衆衛生のレベルを上げていくことに力点を置きたい。そうした観点で、議会に訴えていきたい」と述べました。

大阪日日新聞
http://www.nnn.co.jp/dainichi/news/160216/20160216035.html
統合案では、新たな研究所を地方独立行政法人が運営する形を想定しており、研究者からは運営面での不安の声も上がったとしたが、「機能統合してマスメリットを生かすという点で、統合に賛成の声が予想以上に多かった」と、あらためて統合へ意欲を示した。

一連の報道から言えることは、
第一に、吉村市長は、「修正すべきものは修正する」と議会との対話を重視するとしながら、衛生研究所の統合・独法化案については、何の修正もしていません。橋下市長時代に3度にわたり環科研の廃止条例が否決されており、吉村市長としては初めての議案提出になりますが、その判断の前に視察せず、議案提出を決めてから視察しています。つまり、今回の視察は、結論ありきでマスコミにアピールするためのパフォーマンスにすぎません。全国で初めて衛生研究所を独立行政法人化すると言うことについて、視察もせずに判断したと言うことであり、いかに公衆衛生の強化を考えていないかは明らかです。その時点でアウトです。

第二に、「コスト削減ではなく」としているのは、「二重行政のムダ」はなかったと認めることです。「研究の内容は重なっている部分が多い」と言いますが、感染症や食中毒の検査や研究においては、環科研は大阪市保健所管内、公衛研は大阪府保健所管内の検査や原因究明にあたると言う意味で、エリア分担をしているにすぎず、無駄ではありません。また、今回の統合・独法化案は、施設は2つのままで、「近くに同じような研究所がある」という「重複」は解消されません。そのため「機能強化」という後付けの理由をつけたにすぎません。

第三に、独法化という形態について「不安の声も上がった」ことを認めざる得なかったことです。吉村市長は研究員の意見を聞きたいと意見交換をしたそうですが、その場に集められたのは各部課長です。各部課長は、議会にも答弁に立ち、市長の統合・独法化案の説明をする立場です。普通は反対意見は出ません。その中から、独法化について現場では検証されておらず、業務が継続できるのか、リストラされて機能が守れるのかという意見が出されたと言うことであり、職員の多くが不安に思い、反対していることの現れです。このあたりは、別に記事にします。
少なくとも、全国ではじめて衛生研究所を独法化することについて、これまできちんとした検討はされていません。最低でも、独法化について、大阪府と横浜市の過去の専門家の意見を踏まえた検討について検証すべきです。

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第四に、「統合によって機能強化」は、これまでの経過から見てウソです。
吉村市長は「機能統合」と言っており、例えば公衛研の細菌課(研究員15人)、ウイルス課(同14人)と、環科研の微生物保健グループ(同11人)の部署を環科研の施設にまとめると言うような構想が考えられます。合計すれば40人になり、スケールメリットを生かして、危機事象の際に集中して対応にあたれると言いたいようです。
統合により「職員倍増」ということは、すでに橋下市長時代から説明されてきましたが、ウソは明らかです。

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実際の現場では、ノロウイルスの担当もそれぞれ1人、結核担当もそれぞれ1人です。感染症のまん延は広域的であり、拡大した際には、環科研でも公衛研でも、その担当が大量の検体をさばいていきながら、遺伝子解析などの感染経路の解析などを行っています。統合しても患者数(検体数)は変わらないので、1人あたりの検査数等は変わらず、「機能強化」にはなりません。
検体数が急増した際には、担当者が解析業務に時間が取れるように、検査は他の研究員が応援にはいるわけで、それは今でも変わりません。組織をまたがって応援に入ると言うことであれば、研究所間の危機管理時の協定があり、今でも可能です。独法化による統合にこだわる理由はありません。

実際の狙いは統合によるリストラです。
吉村市長の与党議員である井戸議員は、統合により「職員はリストラする」「90+90=180にするとは一度も言っていない」「独法化で流動的職員を増やす(非正規化)」「検査は外注化」と明言しています。感染症・食中毒関係でも結核菌検査を外注化とするとしていますが、職員をリストラすれば「職員倍増」はしません。
公明党の辻議員に、井戸議員の暴論を情報提供したところ、「それはいけません。機能強化が前提ですよね」と吉村市長にも質問がされましたが、現時点で何の返答もありません。

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問題は、これは井戸議員という特異な個人の主張ではないことです。
そもそも、府市統合本部会議で、衛生研究所については「二重行政のムダ」とされ、しかも感染症の検査も含めて外注化、独法化による非正規を増やすことがメリットとされて決定されたものです。そして2013年末には、上山特別顧問が「リストラ計画」を指示しています。上山顧問のリストラ指示については、活動が非公開とされ、統合・独法化でなにをリストラしようとしているのか明らかにされていません。

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「機能強化」という抽象的な言葉は、具体的に、何を機能強化するのかが問題です。2014年(H26)1月28日の府市統合本部会議でも松井知事が発言していますが、健康危機管理の機能強化ではありません。

○松井知事:いまの公衛研の所長も、機能強化、二つの研究所の機能を統合して機能を強化することが重要だと言っている。この間の医療戦略会議、これも上山先生にいろいろまとめていただいた中で、スマートエイジングシティ等の考え方も出てきていますし、また医薬品の中心地域と言うことで、企業を呼び込む、国へも提言していく。この支えになるのが研究機関ということ。機能強化について、まとめていきたい。

当時の松井知事等の考える「機能強化」とは、健康危機管理の機能強化ではなく、新産業の支援機関としての機能強化です。その財源が感染症や食中毒の検査のリストラだったのは明らかです。それでは市民の健康が守れないと議会の反対が強くなったために、あわてて、後付けで、健康危機管理の強化のために統合をと言いだしているにすぎません。

第五に、感染症等に対する機能強化と言うのであれば、2016年4月の感染症法改正に対して、独法化という形態が適切なのか再検討が必要ですが、吉村市長は何のコメントもありません。
感染症法改正では、地方衛生研究所での感染症の検査と国への報告は「自治体の義務」と明記され、独法化はありえません。府議会で可決されていたとしても、その後の状況変化があるのであり、自民党が主張するように「大阪会議」等で再検討が必要です。
感染症等に対する機能強化を本当に図りたいのであれば、現在の衛生研究所の抱える問題について、厚労省の審議会で出されたデータ等を踏まえ、統合の経営形態(独法化)については、検討が必要です。このあたりは別に記事にしますが、すでに環科研では58%もの研究員が削減されており、機能強化と言うのであれば、統合ではなく十分な技術継承のできる職員の配置が必要です。

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